「キャリアアップ助成金」という名前は聞いたことがあっても、
実際には
- 正社員にしたときだけの助成金なのか
- パートや契約社員の賃上げでも使えるのか
- 何を先にやればいいのか
が分かりにくい制度だと感じる方も多いと思います。
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者など、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するために、正社員化や処遇改善の取組を行った事業主に支給される制度です。
https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001512805.pdf
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キャリアアップ助成金は「正社員化」だけではありません
厚生労働省の令和7年度版パンフレットでは、主なコースとして次のものが案内されています。
- 正社員化コース
- 賃金規定等改定コース
- 賃金規定等共通化コース
- 賞与・退職金制度導入コース
- 社会保険適用時処遇改善コース
つまり、正社員転換だけでなく、賃上げや制度整備でも活用できる助成金です。
https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001512805.pdf
まず押さえたい大前提
この助成金を使ううえで非常に大事なのが、各コースの実施日の前日までに「キャリアアップ計画」を作成し、提出する必要があるという点です。厚労省は公式ページで、支給申請までの流れとしてこの点を明記しています。
実務では、
「先に正社員化してしまった」
「先に賃金規定を変えてしまった」
というケースが少なくありません。
ただ、制度上は先に計画、あとで取組が基本になるため、この順番はとても重要です。これは公式の申請フローから見ても、最初につまずきやすいポイントです。
いちばん知られている「正社員化コース」
正社員化コースは、就業規則や労働協約などに基づいて、有期雇用労働者等を正社員化した場合に助成されるコースです。厚労省パンフレットでは、1年度1事業所当たりの支給申請上限人数は20名とされています。
助成額は、対象者の属性によって分かれます。
厚労省資料では、有期雇用労働者を正社員化した場合、中小企業は通常40万円、重点支援対象者は80万円(40万円×2期)、**無期雇用労働者を正社員化した場合、中小企業は通常20万円、重点支援対象者は40万円(20万円×2期)**と案内されています。大企業はこれより低い金額です。
また、正社員転換制度を新たに規定した場合は20万円加算、多様な正社員制度を新たに規定した場合は40万円加算があり、いずれも事業所当たり回数制限があります。
賃上げで使う「賃金規定等改定コース」
このコースは、有期雇用労働者等の基本給に関する賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を適用させた場合に対象になります。
助成額は、引上げ率によって変わります。
厚労省パンフレットでは、中小企業の場合、3%以上4%未満で4万円、4%以上5%未満で5万円、5%以上6%未満で6.5万円、6%以上で7万円とされています。大企業はそれぞれより低い単価です。さらに、職務評価の手法を活用して賃金規定等を増額改定した場合は20万円加算があります。
「正社員化まではまだ難しいけれど、非正規の待遇改善は進めたい」という会社には、このコースが現実的な選択肢になることがあります。これは制度設計上も、処遇改善を後押しする位置づけだと読み取れます。
制度をそろえるなら「賃金規定等共通化コース」
このコースは、有期雇用労働者等と正規雇用労働者に共通の、職務等に応じた賃金規定等を新たに作成し、適用した場合に助成されます。
助成額は、1事業所当たり中小企業60万円、大企業45万円です。
ただし、要件はやや細かく、賃金規定の区分数や、共通化した区分への格付け、時間当たり賃金の比較、全員への適用など、制度設計面の整理が必要です。単に「同じ表を作った」だけでは足りず、制度として整合性のある設計が求められます。
「賞与・退職金制度導入コース」もある
令和7年度版パンフレットでは、賞与または退職金制度を新たに導入し、有期雇用労働者等に適用した場合のコースも案内されています。支給申請書の記入例では、基礎分として中小企業40万円、大企業30万円、さらに同時導入時の加算分として中小企業16.8万円、大企業12.6万円が示されています。
このあたりは、採用や定着に向けて「待遇の見せ方」を整えたい会社に相性がよいテーマです。単なる助成金の話だけでなく、制度整備そのものが人材確保にもつながることを考えると、実務上の意味は大きいといえます。これは制度趣旨からの実務的な読み取りです。
社会保険の壁対応としてのコースも重要です
厚労省は別ページで、社会保険適用時処遇改善コースを案内しています。さらに、令和7年7月1日から「短時間労働者労働時間延長支援コース」を新設したと公表しています。これは、社会保険適用時処遇改善コースの労働時間延長メニューの見直しを踏まえた新コースです。
社会保険適用時処遇改善コースの案内では、令和7年度版リーフレットに、新たに社会保険の被保険者とした際に手当支給・賃上げ・労働時間延長などを行うメニューが示されており、中小企業で手当等支給メニュー50万円、労働時間延長メニュー30万円などの水準が案内されています。
申請時期も大事です
厚労省パンフレットでは、支給申請は原則として、取組後6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内と案内されています。コースによって細かい差はありますが、取組後すぐではなく、一定期間運用してから申請する流れです。
このため、実務では
「制度を整える」
「対象者に適用する」
「6か月運用する」
「その後、期限内に申請する」
という流れを意識しておく必要があります。
実務でよくある注意点
キャリアアップ助成金は人気のある制度ですが、実務では次のような点でつまずきやすいです。
まず、就業規則や賃金規程の整備が不十分なケースです。
正社員化も賃金改定も、制度に基づいて実施していることが前提なので、口頭運用や場当たり的な対応では難しいことがあります。
次に、計画提出のタイミングが遅いケースです。
「やってから申請できると思っていた」という誤解はかなり多いですが、厚労省は前日までの計画提出を明記しています。
さらに、賃金の比較方法や増額率の考え方を誤るケースもあります。
厚労省パンフレットでは、正社員化前後で所定労働時間や給与支給形態に変更がある場合は、単純な月額比較ではなく、1時間当たり賃金で比較する考え方も示されています。
まとめ
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を後押しする助成金で、代表的なものとして、正社員化コース、賃金規定等改定コース、賃金規定等共通化コース、賞与・退職金制度導入コース、社会保険適用時処遇改善コースがあります。
特に大切なのは、
「何をしたら対象になるか」より先に、「いつ計画を出すか」「規程をどう整えるか」を押さえることです。
助成額だけを見るのではなく、制度整備と運用まで含めて考えると、結果的に申請もしやすくなります。これは厚労省の申請フローや各コース要件から見ても、とても重要な視点です。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html
