近年、カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」への対応は、多くの企業にとって無視できないテーマになってきました。
従業員を守るために何か対策をしたい。
ただ、何から始めればいいのかわからない。
そんな企業にとって、ひとつの後押しになるのが、東京都のカスタマーハラスメント防止対策推進事業 企業向け奨励金です。
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/kaizen/ryoritsu/kasuhara
この奨励金は、東京都のカスタマー・ハラスメント防止条例の施行にあわせて、企業がカスハラ対策を進めやすくするために設けられた制度です。東京都は、条例施行日である令和7年4月1日以降に、マニュアル整備と実践的な取組を行った企業等に対して、奨励金を支給すると案内しています。
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奨励金の対象になるのはどんな会社か
対象となるのは、都内で事業を営む中小企業等または個人事業主で、常時雇用する従業員が300人以下であることなど、所定の要件を満たす事業者です。中小企業等は、都内に本店登記または支店の事業所があること、個人事業主は開業届を提出していること、さらに都内事業所で継続して1年以上事業を行っていることや、税の滞納がないことなども要件に含まれています。
「うちはまだ規模が小さいから対象外かもしれない」と思われることもありますが、実際には小規模事業者や個人事業主にとっても確認する価値のある制度です。
いくら支給されるのか
企業向け奨励金の金額は、40万円の定額です。募集規模は、東京都の案内では各回1,000件とされています。
何をすれば対象になるのか
ポイントは、単に「困っています」と申請するだけでは足りず、マニュアル整備と実践的な取組の両方が必要になることです。
まず必要になるのが、カスタマーハラスメント対策マニュアルの作成または改定です。しかも、令和7年4月1日以降に作成または改定していること、企業名や作成・改定年月日が確認できること、募集要項で求められる必須項目を満たしていること、社内に周知していることが求められています。さらに、そのマニュアルの中で定めた基本方針を社内・社外へ周知していることも必要です。
そのうえで、次のいずれか1つの実践的な取組を行う必要があります。
録音・録画環境の整備、AIを活用したシステム等の導入、外部人材の活用のいずれかです。
たとえば録音・録画環境の整備では、令和7年4月1日以降に対象機器を新たに購入またはリース契約し、運用ルールを定め、社外にも周知し、都内事業所に整備していることなどが要件になっています。契約の場合は6か月以上の期間が必要で、請求書ではなく領収書など所定の証票が必要とされています。
申請にあたっての注意点
この制度は、申請すれば必ず受け取れるものではありません。東京都も、要件に基づく審査のうえで支給可否を決定すると明記しています。また、虚偽申請などの不正受給については、返還や罰則の対象となる場合があると案内されています。
さらに、申請はJグランツによる電子申請で行われ、利用にはGビズIDプライムの取得が必要です。ID発行には時間がかかるため、余裕をもって準備するよう案内されています。提出書類に不備があると受け付けられないため、様式や添付資料の確認はかなり重要です。
特設サイトのFAQでは、申請から支給決定まで3〜6か月程度、その後、請求申請提出から振込までは約1か月程度かかるとされています。すぐに入金される制度ではないため、スケジュール感も見ておきたいところです。
実務でつまずきやすいところ
実務上ありがちなのは、
「マニュアルは作ったけれど、要件に沿っていなかった」
「周知したつもりでも、周知日が確認できる資料が残っていない」
「マニュアルに企業名や作成年月日が入っていない」
といったケースです。
東京都が公表している不備解消資料でも、マニュアルに作成・改定年月日や企業名の記載がないことや、周知日の確認できる書類がないことが、よくある不備として挙げられています。
この奨励金は、設備を入れればよい、システムを入れればよい、というものではなく、社内ルールの整備と証拠の残し方まで含めて進める制度だと考えたほうがよさそうです。これは公表要件からの実務的な読み取りです。
今、企業がカスハラ対策に取り組む意味
カスハラ対策は、単にトラブル防止のためだけではありません。東京都の特設サイトでも、従業員が安心して働ける環境を確保することが、モチベーション維持、定着率向上、生産性向上、顧客満足度の向上につながると案内されています。
制度対応として必要だからやる、というだけでなく、
「従業員を守る」
「現場を疲弊させない」
「会社としての対応方針を明確にする」
という意味でも、早めに整備しておく価値は大きいと感じます。
まとめ
東京都のカスハラ奨励金は、都内中小企業等がカスハラ対策を具体的に進めるための40万円の定額支援制度です。対象になるには、マニュアルの整備・周知に加えて、録音録画、AIシステム、外部人材活用のいずれか1つの取組が必要です。申請は電子申請で、書類の整え方も重要になります。
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/kaizen/ryoritsu/kasuhara
「うちも対象になるのかな」
「どこまで整備すればいいのかな」
と迷う場合は、募集要項を確認しながら、早めに準備を進めることが大切です。なお、令和8年3月8日時点では、特設サイト上で第3回申請受付は3月18日開始予定、詳細は3月9日に案内予定とされています。最新情報は申請前に必ず公式案内を確認したいところです。
